第30回UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)が山口県宇部市野中のときわ公園UBEビエンナーレ彫刻の丘で開かれている。1961年に国内最大規模の野外彫刻展として始まり、隔年で開催。彫刻家の登竜門として知られ、今春には「最も長く続いている野外彫刻展」として、ギネス世界記録にも認定された。会場には、入賞作品9点と1次審査通過作品の計15点のほか、過去の大賞作品も展示されている。湖を望む丘で彫刻との対話を楽しんで。入場無料。(敬称略)
◇Press block
大賞(宇部市賞)賞金500万円
渡久地佑弥 2000年生 福岡県
400(高さ)×210(幅)×210(奥行き)㌢・コンクリート、鉄筋
丘の上にぽつんと立つブロック。周囲を取り囲んだ空気に押され、あらがいながら自らの形を保ち、雄々しく立ち続ける。そんな孤独な姿が、青空の下ではすがすがしく、いとおしい。ソンナモノニワタシハナリタイ。
◇IMAGINE
UBE株式会社賞 賞金400万円
藤井浩一朗 1963年生 東京都
296×135×91㌢・大理石
発芽した芽のようなフォルム。あたかもはるか昔からそこに存在していたかのように。そっと手を触れる。大理石に眠る太古の貝や動物たちを通し、生命を生み出し育む地球と対話する。時が、静かに流れる。
◇十二の物語
毎日新聞社賞 賞金100万円
小笠原伸行 1955年生 千葉県
197×365×320㌢・耐候性鋼板(サビだし)
思いをのせた12通の手紙。折りたたまれた紙が物語をはらみ、たたずむ。赤茶けた姿は、ずっと以前からそこに在ったようにも、今まさに紡がれたようにも見える。希望を届ける先は、戦地、だろうか。
◇THE FOREST GOWN
山口銀行賞 賞金100万円
石上和弘 1966年生 静岡県
320×345×235㌢・杉材、銅板、鉄材など
ふっと木の香りが漂う。ガウンをまとうように大木に抱かれ、見上げると青空がぽっかり浮かんでいる。ゴツゴツとした表皮一枚一枚が編み込まれ、生命の勢いのまま、木は天へと伸びゆく。
◇フリーエア
宇部商工会議所賞 賞金50万円
ファン・ユジョン 1974年生 台湾
300×193×179㌢・ステンレス、真ちゅう
海底に突き刺さったエアボンベから、バブル(泡)がぷかり。銀色に輝くバブルの中には芝生や青空が映り込み、小宇宙を創り出す。海の底と丘と空と人が一体となり、新たな未来に向かい、進み行く。
◇見てくる犬
島根県吉賀町賞 賞金20万円
佐藤一明 1970年生 北海道
255×134×220㌢・鉄板、ペンキ
のんびりとしたたたずまいで、その小さな瞳が見つめるものは何か。主人を待っているのか。何かをおねだりしているのか。あるいは、せわしなく動き回る人間たちを眺めているのだろうか。そばで一緒に見てみたい。
◇雨雲ヒュッテ
山口県立美術館賞 賞金20万円
大西治・大西雅子1962年生・1960年生京都府
220×400×260㌢・アルミニウム、ステンレス、強化ガラス
芝生に降り立った宇宙船?カニ?雨雲? 中に潜り込み、天井を見上げる。円形の窓から見える空は宇宙にも、ヒュッテ(山小屋)から望む青空にも見える。少しだけ日常の重力から自由になり、感覚を解き放つ。
◇そのさきにあるもの
島根県立石見美術館賞 賞金20万円
関玄達 1965年生 東京都
140×680×60㌢・アルミニウム、ステンレス
湖に向かってまっすぐに伸びる雲。向かう先には、輝く湖面がある。雲は周囲の風景を映し出し、光により刻一刻と姿を変えていく。雲と共に世界を見つめる。その先にあるのは、未来だろうか。
◇Hito_ita−k021 Jun.024
柳原義達賞(特別賞) 賞金150万円
Kyuichi Sato 1955年生 宮城県
260×104×101㌢・石(美祢産大理石、江持石、姫神黒石)など
巡る、巡る、生命は巡る。太古の時代から人類は大陸をまたぎ、同じ文様を刻んできた。渦、組みひも、植物、動物……文化の違いを超え、人類が地上に刻みつけようとしてきたものは何だったのか。今一度、見つめる。
◆その他の作品
◇実物大制作
袁方洲 チャチャワン・アムソムキッド 松村明育 桑田覚 ダム・ダン・ライ クウシオグル・スタイ
◇模型入選
プロジェクト・ムーン 土田義昌 仲田守 岩崎順一 諸隈聖暁 木村徳人大松俊紀 森太三 武田克史 山口裕之 岡田健太郎 布施美子貴 伊藤剰クオ・クオシャン クボ・タケシ
◇選考委員
酒井忠康(委員長) 美術評論家
水沢勉 美術評論家
植松奎二 彫刻家
河口龍夫 現代美術家、筑波大芸術学系名誉教授
河野通孝 山口県立萩美術館・浦上記念館館長
不動美里 姫路市立美術館館長
藤原徹平 建築家、横浜国立大大学院Y−GSA准教授
日沼禎子 女子美術大教授
高橋咲子 毎日新聞社東京本社学芸部記者
INFORMATION
第30回UBEビエンナーレ
<開催期間>12月22日(日)まで
<問い合わせ>UBEビエンナーレ事務局(0836・34・8562)
<主催>宇部市・UBEビエンナーレ運営委員会・毎日新聞社
<特別協賛>UBE株式会社
2024年11月28日 毎日新聞・東京朝刊 掲載