最優秀賞を受賞した「くう」=繁田諭さん撮影 ©Satoshi Shigeta

歴史と環境の融合 京都で「建築学生ワークショップ」

文:山田夢留(毎日新聞記者)

建築

 全国から公募した建築や環境、美術やデザインを学ぶ学生が世界遺産の「聖地」に滞在し、小さな建築空間を作る「建築学生ワークショップ」(毎日新聞社など後援)が9月15日、京都の醍醐寺で開催された。今年、開山1150年を迎えた境内を舞台に、学生らは歴史を読み解きながら、環境に配慮した素材で独創的な建築を制作した。

 ワークショップは、大阪が拠点の建築家、平沼孝啓さんが代表理事を務めるNPO法人アートアンドアーキテクトフェスタ(AAF)が、2010年から主催。これまで伊勢神宮や明治神宮、東大寺などで開催し、古都・京都では昨年の仁和寺に続き2度目の開催となった。

 全国から集まった約60人の学生は10班に分かれ、6月からリサーチを開始。一線で活躍する建築家や、地元で伝統工法に携わる技術者の指導を受けながら、地域に滞在して構想を練ってきた。9月10日には、現地での合宿制作がスタート。国宝に指定されている金堂や京都最古の五重塔など境内の名所の前に、10体の建築が完成した。

 15日には境内の「霊宝館」で、各班による公開プレゼンテーションが行われた。美術評論家の建畠晢さん、建築家の藤本壮介さんら24人が審査。流通材を使用するのではなく、手すき和紙の職人に教わった技法ででんぷんを固め、構造を作り上げた3班の「くう」が、最優秀賞に選ばれた。優秀賞は竹と赤く染めた羊毛を用いた7班の「泡沫(ほうまつ)」、特別賞は落ち葉を固めた5班の「うつろい」。次回は2025年大阪・関西万博の会場を舞台に実施することも発表された。

優秀賞を受賞した「泡沫」=繁田諭さん撮影 ©Satoshi Shigeta

2024年10月7日 毎日新聞・東京夕刊 掲載

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